この記事では、試験によく出る介護保険法の条文について紹介していきます。
介護保険法の条文は、第1章から第14章とかなりのボリュームがありますので、すべて読むのは大変ですよね。
しかし、試験に出題されるのは、主に第1章(第1〜5条)に限られています。
すべてを網羅する必要はなく、概要とキーワードを押さえることで、確実に点数アップが期待できる項目となっているのです。
それでは、第1条の全文と押さえておきたいキーワードを紹介していきますので、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
第1条 制度の目的
加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
以上が、第1条の全文です。
非常に長い文章ですが、要約をすると、
「加齢や障害によって介護が必要になった人が、その人らしい自立した生活を送ることができるよう、国民みんなで支え合う」
という趣旨が記載されています。
こちらは、言うまでもなく何となく人として大切であることが明記されていますので、理解しやすいですよね。
なお、条文の内容を問われる試験対策としては、以下のように頭に入れておくことをオススメしています。
- 第1条は、制度の目的について明記されている
- 要約をすると、「介護が必要になった人が、その人らしい自立した生活を送ることができるよう、国民みんなで支え合う」ということである
- そこには、「尊厳の保持」、「国民の共同連帯」などというワードが明記されている
このように把握しておくことで、ノーマークだったワードが万が一出題されたとしても、
そのワードと趣旨がリンクしているかを判断することで、より正解が導きやすくなると考えています。
例えば、「国民みんなで支え合う」が頭の中に入っていれば、「共同連帯」というキーワードを連想しやすくなるという意味合いです。
なお、要約の仕方や覚え方は人それぞれですので、こちらを参考に、よりキーワードを連想しやすい自分なりの覚え方を見つけてみてください。
それでは、キーワードをみていきましょう。
押さえておきたいキーワード
- 尊厳の保持
- 自立した日常生活
- 共同連帯の理念
以上のとおりです。
キーワードについて、一つずつ紹介していきます。
1. 尊厳の保持
個人の存在や価値観を尊重し、その人らしい生活、生き方ができるようにすることを示しています。
この基本理念は、医療や介護の現場においてもそうですし、多様な価値観を尊重する現代社会においてもとても大切なことですよね。
2. 自立した日常生活
介護保険制度は、高齢者や障害者、介護予防が必要な方々の自立を支援するものとされています。
自立というと、「介護に頼らず何でも一人でできるようにすること」と思われがちですが、ここでいう自立とは決してそのような意味合いではありません。
「その有する能力に応じ」という文言があるように、その人が持っている能力や生活背景なども考慮したうえで、できる限りの自立を支援するというものになっています。
3. 共同連帯の理念
介護保険制度は、国だけでもなく、また、国民の税金だけでなく、社会全体で支え合うことを示しています。
詳細につきましては、別の記事で紹介をしますが、介護保険制度の財源は、公費と保険料で賄われています。
保険料は、我々が国に収めている税金のことですね。
介護保険の保険料は、年齢など、ある一定の条件に達した方が収めるものですが、
この保険料があるからこそ、介護が必要な方々がサービスを受けることができ、また、自身がサービスを受けることができるのです。
こうして、国民一人ひとりが受け手、支え手となって、制度を支えることが共同連帯の理念とされています。
このような要領で、第2条以降もみていきましょう。
第2条 介護保険
介護保険は、被保険者の要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)に関し、必要な保険給付を行うものとする。
保険給付は、要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行われなければならない。
保険給付は、被保険者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、被保険者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者又は施設から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。
保険給付の内容及び水準は、被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない。
第2条は、「介護状態の軽減のために医療と連携する。被保険者自らが選んだサービスで、できる限り居宅で自立した生活する」という趣旨で記載されています。
キーワードをみていきましょう。
押さえておきたいキーワード
- 医療との連携
- 被保険者の選択
- 居宅において
1. 医療との連携
要介護状態等を軽減したり、悪化を防ぐためには、介護保険のサービスだけでなく、医療との連携を密に行うということになります。
高齢者や障害者の方々は、医療を必要とされる方も多いので、総合的に支援をする視点は大切ですよね。
2. 被保険者の選択
介護保険制度では、被保険者自身がサービスを選択することができます。
現代では当然のことかもしれませんが、
実は、介護保険制度の創設前は、老人福祉法という法律のもと、「あなたは、この施設に入所してこのサービスを受けてください」というように、行政機関が措置として被保険者のサービスを決定していたのです。
サービスを勝手に決められてしまうのは、抵抗がありますよね。
こうした背景や老人福祉法におけるさまざまな問題点の改善も図るためにも、介護保険法では、被保険者がサービスを選択できるようになったのです。
しかし、被保険者の意向は最大限に尊重されますが、すべてのサービスを自由に選ぶことができる訳ではありませんので、注意してくださいね。
3. 居宅において
第3条 保険者
市町村及び特別区は、法律の定めるところにより、介護保険を行うものとする。
市町村及び特別区は、介護保険に関する収入及び支出について、政令で定めるところにより、特別会計を設けなければならない。
第3条は、出題される可能性は少ないですが、何について明記されているかは把握しておきましょう。
強いて言うのであれば、保険者、特別会計というワードが大切です。
こちらは、別の記事で紹介をしますが、市町村及び特別区は、介護保険の運営にあたって特別会計を設けることになっています。
第4条 国民の努力及び義務
国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。
国民は、共同連帯の理念に基づき、介護保険事業に要する費用を公平に負担するものとする。
第4条は、国民がなすべき2つの事柄ついて明記されています。
一つ目は、自ら予防や健康に努めるということ。
二つ目は、介護保険の費用(保険料)を収めるということです。
キーワードは、以下のとおりです。
- 予防、健康の保持増進、能力の維持向上
- 費用を公平に負担
1. 予防、健康の保持増進、能力の維持
国民は、要介護状態になって介護を受けるのでなく、要介護状態にならないよう自ら予防や健康を維持するために努力をする義務があるのです。
近年、予防が大切ということはよく言われていますが、介護保険法にも明記されていたのですね。
2. 費用を公平に負担
こちらは、第1条の「共同連帯の理念」でも紹介したように、被保険者は保険料を公平に収めることが義務であることを示しています。
このように、第4条では、国民がなすべき努力や義務のことが明記されていますが、
費用については、払うように努力する訳ではなく、払わなければならない義務となっています。
努力義務と義務については、条文だけでなく、他の単元においてもよく試験に出題されますので、注意して理解してくださいね。
第5条の1 国及び地方公共団体の責務
国は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるよう保健医療サービス及び福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策その他の必要な各般の措置を講じなければならない。
都道府県は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるように、必要な助言及び適切な援助をしなければならない。
都道府県は、前項の助言及び援助をするに当たっては、介護サービスを提供する事業所又は施設における業務の効率化、介護サービスの質の向上その他の生産性の向上に資する取組が促進されるよう努めなければならない。国及び地方公共団体は、被保険者が、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、保険給付に係る保健医療サービス及び福祉サービスに関する施策、要介護状態等となることの予防又は要介護状態等の軽減若しくは悪化の防止のための施策並びに地域における自立した日常生活の支援のための施策を、医療及び居住に関する施策との有機的な連携を図りつつ包括的に推進するよう努めなければならない。
国及び地方公共団体は、前項の規定により同項に掲げる施策を包括的に推進するに当たっては、障害者その他の者の福祉に関する施策との有機的な連携を図るよう努めるとともに、地域住民が相互に人格と個性を尊重し合いながら、参加し、共生する地域社会の実現に資するよう努めなければならない。
第5条では、国、都道府県、地方公共団体の義務、責務について明記されています。
なお、第4条では、国民の義務について明記されているので、第4条は国民の、第5条は、行政と覚えるとよいでしょう。
条文のとおり、介護保険制度は、国、都道府県、地方公共団体がそれぞれの役割のもと共同で運営されています。
それぞれの組織の役割、責務の詳細については、後ほど覚える必要がありますが、ここでは大まかに押さえておきましょう。
国は、制度に関する基本的な方針を定め、大きな枠組みを構築。
都道府県は、市町村のバックアップとして、サービス等の質の向上を支援する。
国、都道府県、地方公共団体を含む行政機関は、他の施策と有機的に連携を図る。
そして、地域住民の人格と個性を尊重し、共生社会の実現を目指す。
以上のように、役割を大まかに理解したうえで、組織ごとにキーワードをみていていきましょう。
押さえておきたいキーワード
国
- サービス提供体制の確保
都道府県
- 市町村への助言、援助
行政機関(国、都道府県、地方自治体など)
- 医療、居住、障害、福祉に関する施策との有機的な連携
- 共生社会の実現
キーワードを一つずつ紹介していきます。
1. サービスの体制確保
国は、介護保険制度の事業の運営が健全かつ円滑に行われるために、制度に関する体制を確保することや、制度の大きな枠組み、基準などを作ることが責務とされています。
2. 市町村への援助、助言
都道府県は、介護保険事業の運営が健全かつ円滑に行われるために、市町村に対して援助、助言を行うことが責務とされています。
財政面への支援を含む、いわゆるバックアップということです。
3. 医療、居住、障害、福祉に関する施策との有機的な連携
こちらは、行政機関が介護保険制度を単独で運営するのでなく、
他のさまざまな施策と連携を図りながら運営するということを理解しておいてくとよいでしょう。
4. 共生社会の実現
「共生社会」とは、簡単にいうと、人種や性別、障害の有無などの多様性を尊重し合い、それぞれが助け合いながら共に暮す社会のことを指します。
続きましては、第5条の2についてです。
第5条の2は、1と同様に行政の責務について明記されていますが、中でも行政が取り組む認知症に関する施策について明記されています。
第5条の2 認知症に関する施策の総合的な推進等
国及び地方公共団体は、認知症(アルツハイマー病その他の神経変性疾患、脳血管疾患その他の疾患により日常生活に支障が生じる程度にまで認知機能が低下した状態として政令で定める状態をいう。以下同じ。)に対する国民の関心及び理解を深め、認知症である者への支援が適切に行われるよう、認知症に関する知識の普及及び啓発に努めなければならない。
国及び地方公共団体は、被保険者に対して認知症に係る適切な保健医療サービス及び福祉サービスを提供するため、研究機関、医療機関、介護サービス事業者(第百十五条の三十二第一項に規定する介護サービス事業者をいう。)等と連携し、認知症の予防、診断及び治療並びに認知症である者の心身の特性に応じたリハビリテーション及び介護方法に関する調査研究の推進に努めるとともに、その成果を普及し、活用し、及び発展させるよう努めなければならない。
国及び地方公共団体は、地域における認知症である者への支援体制を整備すること、認知症である者を現に介護する者の支援並びに認知症である者の支援に係る人材の確保及び資質の向上を図るために必要な措置を講ずることその他の認知症に関する施策を総合的に推進するよう努めなければならない。
国及び地方公共団体は、前三項の施策の推進に当たっては、認知症である者及びその家族の意向の尊重に配慮するとともに、認知症である者が地域社会において尊厳を保持しつつ他の人々と共生することができるように努めなければならない。
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